<東京都知事選:細川氏の会見を見て感じたこと>

細川氏が会見で、「腹7分目の豊かさで良しとする成熟社会への転換が求められている」「原発再稼働は、後の世代に対する犯罪行為」「原発コストは実際には天文学的であり、同じコストをかけるなら自然エネルギーの方が、新しい技術や雇用を生み出せて生産的であり、成長の切り札に」「原発を推進してきた世代の責任を果たしたい」と、原発に対して明確なNOを表明したこと、これまで推進してきたことを誤りと認め、生活、国の在り方を180度転換させるのは、今しかないと主張したことに対しては、心から共感するし、どんどんそういった方向性で、行動していってほしい、応援したいと思う。
ただ、会見内容と質疑応答を聞いた限りでは、以下の疑問、違和感が残る。
1.原発を最優先のシングルイシューとして捉えている立場であるにも関わらず、具体的な政策に乏しい。
 記者の「エネルギー戦略会議設立以外の具体的な政策は?」との質問に、言いよどんだ後「例えば?」と聞き返していて、正直、不安に。
都民投票の可能性に言及してくれたのは良かったけど、「東電のどこが問題か?」という質問に対しても、「今のところは具体的には言えない、戦略会議の人選や、対策の具体的な話は知事になってから」では、政策内容が伝わらないし、他の脱原発派との違いが明確には分からず、有権者の判断材料にはなりえない。
2.他の候補者(名前は出なかったけど、宇都宮氏)との共闘について:
 「志を同じくする人が立たないから出馬を決めた」という点について、記者に「同じく原発ゼロを掲げている陣営があるが、そことの違いは?」と聞かれ、「細かくは分からない、どの方のことかも分からないが、その人は、原発ゼロ、再稼働阻止を最優先課題にしていないのでは?」と答えていた。
 脱原発に関して、早い段階で具体的な政策を打ち出している他の候補について学んで、共闘しようとはしなかった、という印象。真剣に実現したいと思っているのなら、普通の市民感覚では、最大限の当選可能性を狙って、他の脱原発派と協力し、仮に共闘が無理だったとしても、最低限、その候補の政策に関心を持つのが自然な行動では?
3.公開討論について:
 ②と関連して、「他の候補者も脱原発を掲げている。具体的な中身を討論する場に、出るつもりは?」との質問には、「皆さんで議論する場というのがあるのか私は知らない。議論するというのは、そこではあまり、どうなのかなと。それぞれが横並びになって、説明する場には出ていく。そこで議論しても話にならない方も多分いると思うので」と発言。個人的には、これがかなり引っかかった。
 「ワイドショーみたいにめちゃくちゃな議論になっても、政策に関する良い判断材料にはならない、テレビやラジオで、視聴者に対して時間をもらってもの申し上げることは、いくらでもやりたい」とのことだけれど、ただ政策表明のみで、議論なしでは、平行線。
違いが見えにくいし、話し合いをするなかで、政策を成熟させていくこと、そもそも全うな議論が(異なる意見を持つ相手に対する礼儀、誠意のある)出来る人格かどうか、ということは、有権者が投票する際に、非常に大きな判断材料になる。
 市民1人1人に開かれた公開討論の場を持つことの重要性に気づいていないというか、そもそもあまり関心がないのかな。市民から遠い人という印象はぬぐえない。
先日三宅洋平氏が、自身のブログで「これから何年かかろうと「市民」がもっと密接に政治に関わっていく社会を作っていくという僕の目的の上で、細川さんには申し訳ないが宇都宮さんと比べて100倍くらいの距離を感じてしまう。」と書いていたが、まさにその通りだと感じた。
 言うまでもなく、仮に当選したら、強大な権力を持つ原子力ムラと闘っていくことになるわけで、「横並び」ではなく、誰とでも顔をきちんと合わせて議論をし、相手の言い分を聞いた上で、いかに新しい方向性を相手に伝え、説得することができるか、粘り強く交渉することができるか、その意志の強さ、誰とでも意見を交わし、議論を深めていくことができる懐の広さ、能力が問われているのだと思う。 
 従来のような討論会ではダメだと思うのなら、別の形の討論の方法を市民と共に作り上げていこう、という風には考えられないんだろうか?少なくとも、そういう気概を持てない候補に、市民に開かれた政治を実現し、原子力ムラと闘う資質があるのだろうか。不安にならざるを得ない。
 私が宇都宮氏に惹かれるのは、常にオープンな議論の場を求めていて、市民の意見に耳を傾けること、市民参加を促し、市民運動を成熟させることの重要性を切実に訴えている人だからだ。
 彼の「『脱原発を実現する最後のチャンス』という声もあるがそういった薄っぺらな運動で、脱原発を実現できると思っているんですか?」という言葉には、これまでサラ金などの多重債務の被害者救済に奔走し、30年かけて、不可能と言われたグレーゾーン金利撤廃の法改正を実現した経験が、反映されているのだと思う。
 私は、やはり市民目線に立って、時には私たちを叱咤し、時には激励し、共に歩んでくれる候補を応援したい。
4.安倍政権の政策について:
 国のありようにも色々物申していきたいと発言したにも関わらず、はじめに「憲法改正、集団的自衛権の行使など、タカ派色が強まっている安倍政権に対する懸念が、出馬の動機に関係あるのか?」と質問した記者に対しては、「必ずしもそれだけではない。色々気になることはある。しかし国政でやることだから、ここで申し上げるべきことではないと思う。」との曖昧な答え。
 そこをIWJの岩上氏に「冒頭で物申していきたいとおっしゃられたからには、集団的自衛権、秘密保護法、憲法改正に関して考えを表明してほしい」と押されて、やっと「集団的自衛権の行使、憲法改正には賛成ではない」と。
しかし、秘密保護法やTPPには言及なし。うーむ・・。
5.小泉氏との関係について:
 ④と関連して、岩上氏や別の記者が、小泉氏が推進した構造改革に関する意見を求め、「立場的な違いで小泉氏とぶつかることはないのか?」と質問。
それに対しては、「脱原発ということで一致してやっているわけで、お互い知りませんし、話し合ったりしません。これからするかもしれませんが、それはお互いすれ違いをするだけじゃないでしょうか」。ここでもう少し突っ込んで考えを聞き出してほしかったな・・。
 小泉氏の過去の政策や、現在の立場に関して、「知りません、話し合ったりしません」で、良しとは思えない。特に東京都知事に立候補するのであれば。小泉氏の政策の結果、雇用が破壊され、格差が拡大し、東京でも大勢の市民が生活苦にあえいでいるのだから。
 細川氏は、原発を最優先のシングルイシューとして出馬するのは、「都知事の第一の任務は都民の生命と財産を守ることだから」と発言したが、今、この瞬間、ぎりぎりの生活を強いられている都民が存在するわけで、この問題を切り離して考えるのは違うと思う。
 同時に、脱原発をそれほど重要視しているのなら、むろん国の政策に、「物申して」いかなければならないのであって、「国政でやることだから」では済まされないのでは。
 更に、小泉氏はイラク戦争に賛同、自衛隊の派遣を容認した人物で、その結果、イラクに核のゴミがばらまかれ、市民が被ばくを強いられることになった。この点に関してはどう考えているのか。意見が聞きたかった。
こういった人間の命や生活、生き方の根本に関わる政策、価値観に関して、相いれない人物と「人生をかけて」共闘する、というのは、私個人の市民感覚からすれば、ありえないことなので、やっぱり違和感が残る。「脱原発のためには、なりふり構っていられない、今しかないのだから、他のことはとりあえず置いておこう」という戦法か、なるほど、とすんなり受け入れることが、どうしてもできない。。
 秘密保護法や憲法やTPPだって原発の問題と繋がっているし、シングルイシューにする、というのは、小泉氏という強力な助人の力を借り、分かりやすく票を集めるための戦略なんだな、政治家なんだから当たり前なのかもしれないけど、そういう駆け引きだとしたら、そういうのは、もうたくさんだ・・というのが、今の私の心境。
 何はともあれ、原発の問題が選挙の争点になり、多くの市民の関心を集め、それぞれが考えを深めるきっかけになるのは、歓迎すべきこと。色んな立場の人たちが、社会に参加する責任や、面白さに目覚める機会になればと願います。
 
 最後に、宇都宮氏か細川氏かで、本来ならば同じ方向を目指している人たちの間で、批判とか攻撃とか分裂が広がらなければ良いなと思う。もう既に始まってしまってるけど。
誰を支持するかは個人の自由。情報を共有したり、意見交換したりしながら、最終的には自分が決める。相手の選択も尊重する。そこまでのプロセスや、これからのプロセスをお互いが大事にできたら、今までよりは良い世の中になるんじゃないか。どう転んだって、これは長い道のりなのだから。
 そういう覚悟を持てたら、目くじらを立てて誰かを全否定したり、結果を見て「もうだめだ」とくじけることはないと思う。